はじめに
今回は、自動運転の分野で日本の強みが出そうな試みである「磁気マーカシステム」についてまとめてみたいと思います。
出典:愛知製鋼プレスリリース
今回なぜこの話題をとりあげたかというと、自動運転の実用化に向けて安全基準を定める改正道路運送車両法がおとといの17日に制定され、ついに高速道路や過疎地での自動運転の実現に向けた環境が整ってきたからです。
ではなぜ、私がこの技術に興味を寄せているか。
それは、センサ技術というのはまだまだ日本の独壇場というイメージが強く、また、このシステムは日本の気候に向いている技術だと考えているからです。その理由を説明するために、まず現在の自動運転技術について少し見ていきましょう。
自動運転技術の現状
現在、自動運転を実現するにあたって、肝になってくる技術として、次の二つ挙げられると思います。
一つ目が「ビューイング」、二つ目が「センシング」です。
いくつかの国内企業の自動運転の現在の試みを表にしてみました。
企業名 | システム名称 | 構成要素 |
トヨタ | ショーファー(自動運転)
ガーディアン(高度安全運転支援) |
2つのカメラ
2つの画像センサ LiDARシステム |
ホンダ | Honda SENSING | ミリ波レーダー
単眼カメラ コントロールユニット |
ニッサン | プロパイロット 2.0 | センサーは7個のカメラ、5個のレーダー、12個のソナー
3D高精度地図データ(HDマップ)によるナビゲーションシステム インテリジェントインターフェース |
参考 :
【日本版】自動運転開発を手掛ける主要企業・会社総まとめ 自動車メーカーからベンチャー・スタートアップまで、LiDARやカメラ開発も
次に海外の有名な企業をいくつかみていきましょう
企業名 | システム名称 | 構成要素 |
Google
(Waymo) |
明確なシステム名無し | 超高解像度マルチセンサ
LiDAR 複数のセンサを組み合わせた8つのモジュール |
テスラ | オートパイロット | 8台のサラウンドカメラ
12個の超音波センサ フォワードフェーシングレーダ |
メルセデスベンツ | インテリジェントドライブ | 二種類のレーザセンサ
ステレオマルチパーパスカメラ |
※メルセデスベンツなどは、明確なシステム名の記載がわからなかったため、HPで自動運転技術をまとめているページの名称を抜粋、Waymoは調べたが目につくようなシステム名などはみられなかった。
海外の企業と国内企業の構成要素を比べてわかることは、国内企業は、海外の企業に比べ「センシング」の分野にも多くの力を使っていることがわかる。これはなぜなのだろうか。
私は、この原因は想定されている道路状況にあると考えています。実際、各社(Waymo、GM、インテルなど、ただしUberは事故により無期限走行禁止)が公道実験を実施する「自動運転の聖地」と呼ばれているアリゾナ州フェニックスの気候は温暖で、雪はほとんど降りません。
現在の自動運転技術では、画像の認識技術が向上したことにより車線を捉えて自動車が車線からはみ出ないようにするといったことを想定されています。確かに、雪が降らないアリゾナ州フェニックスのような場所ではこのままでいいのかもしれません。しかし、場面を日本に移した場合はどうでしょうか?
冬で雪が降り道路に積雪がある場合、車線が見えないことがあります。その時に果たして車線を捉えることができるのでしょうか?このような道路状況が考えられる日本で自動運転技術を運用しようとした場合、一番有力になってくるのが、磁気マーカを活用した路車間協調・誘導型の自動運転システムなのです。この磁気マーカ単体では完全に自律した自動運転とはいかないですが、一足先に国内で自動運転を実現する可能性が高いのがこの磁気マーカであり、もし完全自立型の自動運転車が出たとしても、あらゆる環境に対応できるようにするための補助としても有力な候補になります。
なぜ磁気マーカシステムが日本に必要なのかを触れたところで、次はこの磁気マーカシステムについてみていきましょう。
磁気マーカシステム
磁気マーカシステムの仕組み
磁気マーカーシステムは、車両底部に取付けた磁気センサーモジュール(MIセンサモジュール)により、走路に沿って敷設したフェライト磁石製の磁気マーカの微弱な磁力を、車両底部に設置した高感度磁気センサ(MIセンサ)で検知し、自車位置を正確に特定することにより車両制御を支援するシステムです。
出典:愛知製鋼プレスリリース
磁気マーカシステムの特徴
メリット
- GPSを受信しにくい屋内や地下、センサが認識を苦手とする積雪や霧などの環境でも位置を推定できる
- 正確なポジショニングが可能
デメリット
- 施工に時間がかかる
- 施工された場所でしか機能しない
やはり、磁気マーカシステムのメリットは、GPSを受信しにくい屋内や地下、センサーが認識を苦手とする積雪や霧などの環境でも自車位置を推定できる点にあリます。現在進められている高速道路や過疎地での自動運転の実証実験に多く関係するところですので、組み合わせることが重要になってきますね。
デメリットであげた施工に時間がかかるというのは、完全自立型の自動運転車は、道路で特別に必要になるものがない事と比べ、こちらは磁気マーカを設置するという意味で時間がかかるという意味です。デメリットとしてあげた二つの項目は、磁気マーカ単体で運用することを考えなければ道路状況が日々変わる箇所(雪,霧,トンネル等)に絞ることであまりデメリットに感じなそうです。
磁気マーカシステムの実証実験
この磁気マーカによるポジショニングシステムは、国土交通省や内閣府の戦略的イノベーションプログラム(SIP)の公道試験で使用されています。具体的には、滋賀県でGPSが届かない地域、長野県の山間部の急カーブが続く区間、雪が積もった冬季の北海道の公道でシステムの効果を実証しました。
まとめ
自動運転技術の本流はやはり完全自立型のように感じますし、トレンドもそちらが今後も続くでしょう。しかし、磁気マーカーシステムは測位システムとの補完性が高く、幅広い環境に対応するという意味でも、自動運転技術をより確実に運用するために必要な技術です。
自動運転レベル4に移行するにあたり、磁気マーカーシステムの存在感はより強くなっていくと思われるので、今後もその実用性、普及率に注目していきたいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。今後は、どのように技術を使われるのかにも触れていきたいと思います。よろしければこの記事をシェアしていただけると励みになります。よろしくお願いします